ヒップホップファッションの歴史 | ストリートカルチャーがメインストリームになるまで
ストリートからアウトサイダーとして生まれたヒップホップシーンでは、独自の美学を持ったファッションスタイルが形成され、ヒップホップファッションは時代とともにユニークな形で発展・進化を遂げてきた。
今回は、そんなヒップホップファッションが生まれてから、メインストリームになるまでの歴史を振り返っていこう。
【目次】
1 ニューヨークに生まれたB-BOYスタイル
2 初のアイコンとなったRUN-D.M.C
3 スタイルセンス・個性の追求
4 より豪華なデザイナーズスタイルに
5 バギーパンツを合わせたルーズなルック
6 ヒップホップがラグジュアリーに進出
1 ニューヨークに生まれたB-BOYスタイル
ヒップホップファッションと呼ばれるジャンルは、1970年代後半から1980年代前半にかけてニューヨークで誕生した。
ニューヨークのB-BOYカルチャーがその源泉であり、ストリートのブレイクダンサーたちが初期のヒップホップカルチャーを確立することに貢献した。
この時代に、トラックスーツやチェーン、カンゴールハットなどが流行り、ヒップホップは独特のストリートファッション文化を形成していった。
2 初のアイコンとなったRUN-D.M.C
ヒップホップのトレードマークである「ストリートルック」の確立に最も貢献したRUN-D.M.C。
当時のニューヨークのB-BOYスタイルからインスパイアされたアディダスのトラックスーツと紐なしのスーパースターをユニフォームとしたRUN-D.M.Cのファッションスタイルは、初期のヒップホップに見られたグラマラスなルックを完全に否定し、よりリアルに近いスタイルを提示した。
その後、LL COOL Jを始めとするラッパーがこのスタイルを引き継ぎ、メインストリームのオーディエンスに対して初めてストリート・スタイルをお披露目した。
3 スタイルセンス・個性の追求
ヒップホップファッションの普及とともに、ラッパーたちはセンスと個性を追求し始めた。
80年代後半から90年代初頭にかけて、Public Enemy(パブリックエネミー)やKRS-OneといったHIPHOPアーティストがミリタリーなルック・ドレッドヘア・そしてブラックナショナリズムと関連した明るい色をファッションに取り入れた。
90年代半ばになると、ラッパーたちはよりゴージャスなデザイナーズスタイルに夢中になった。
2PacやP. Diddyといったラッパーたちは昔のギャングにインスパイアされた、ゲットーファビュラスと呼ばれるスタイルを取り入れ、デザイナーズスーツやボーラーハットを身に纏った。
そして、ノトーリアスB.I.G.はVersaceやPRADAといった高級ブランドについてラップし始め、ヒップホップから高級デザイナーズブランドへのアプローチが始まった。
しかし、この頃のヒップホップは、まだファッション界に受け入れられるほどの力は持っておらず、ハイブランドへの一方的な片思いであった。
5 バギーパンツを合わせたルーズなルック
90年代後半になると、バギージーンズ、ベースボールキャップ、ブーツといったルーズなファッションスタイルが再び盛り上がりを見せた。
WU-TANG CLAN(ウータン・クラン)に代表されるヒップホップファッションだ。
そして、このスタイルの流行は2000年代初頭まで続いたが、ヒップホップが新たなポピュラー音楽として躍進した2000年代後半、ヒップホップファッションも大きな変化を遂げることとなる。
6 ヒップホップがラグジュアリーに進出
2000年代後半、ヒップホップが音楽業界において確かな地位を築きあげると同時に、ファッションスタイルも大きな変化を遂げた。
Kanye WestやASAP Rockyといったラッパーたちは、バギーパンツから一転してタイトなシルエットのファッションスタイルを好んだ。
そして彼らはファッションを自身のアイデンティティの不可欠な一部として掲げ、ASAP Rockyは楽曲『Peso』の中で、「Rick Owens, Raf Simons, usually what I’m dressed in.(リックオウエンス、ラフシモンズ、俺が普段着ている服だ)」と歌い上げた。
2016年、ASAP RockyはDior Hommeのフロントに立つ初の黒人モデルとなり、ルイ・ヴィトン、マーク・ジェイコブス、サンローランといった名だたるブランドもラッパーを前面に押し出したキャンペーンを次々に打ち出した。
そして、服のデザインにおいてもストリートの要素を求めたラグジュアリーブランドは、Supreme、NIKEといったストリートブランドとコラボし、ルイ・ヴィトンは2019SSからストリートブランド出身であるヴァージルアブローをデザイナーに抜擢した。
一度、ハイブランドへの片思いに終わったヒップホップだが、今度はラグジュアリーブランドからの猛烈なアタックにより実を結び、ヒップホップファッションをメインストリームへと押し上げた。
MINARI.(ミナリ)は情報の質にこだわり、記事の執筆に時間をかけて丁寧に行っています。他の記事もぜひ合わせてお楽しみ下さい。