なぜスキニージーンズはラッパー達のコーデの定番になったのか?
スキニージーンズのメンズファッションアイテムとしての始まりは、ラモーンズのようなパンクロッカー達や、イギー・ポップのようなロックミュージシャン達だ。
そして、HIPHOPの創世記には既に存在していたスキニージーンズが主流になったのは90年代。
00年代半ばになると、より多くのラッパー達がスキニージーンズを履き始め、ヒップホップファッションにおけるデニムの歴史が変わっただけでなく、ストリートファッション全体においてジェンダーの壁が取り払われた大きなきっかけになったように思える。
そんなスキニージーンズは今やラッパー達の定番アイテムだ。
今回は、各時代においてスキニージーンズの人気に影響を与えてきたスター達を振り返りながら、その壮大な歴史をご紹介しよう。
【目次】
1 【1982】Grandmaster Flash
2 【1988】Public Enemy
3 【2007】Cool Kids
4 【2008】Pharrell Williams
5 【2009】New Boyz
6 【2009】Kanye West
7 【2010】Lil B
8 【2011】Lil Wayne
9 【2014】Kid Cudi
10 【2015】Travis Scott、ASAP Rocky
11 【2017】Migos、21 Savage、Lil Uzi Vert
12 【2019】22Gz、Sauce Walka
13 【2021】Playboi Carti、Lancey Foux
1 【1982】Grandmaster Flash
78年にニューヨークのサウスブロンクスで結成されたHIPHOPグループであるGrandmaster Flash(グランドマスター・フラッシュ)が大作「The Message」をリリースした際、ジャケ写には、メンバー達がスレンダーカットのジーンズと光沢のあるレザーパンツを履いている写真が使われた。
繁華街のパンクシーンからヒントを得て、細身のレザーを身につけたこのグループは、バイカーギャングや80年代ポップの豪華さなどを見事に融合してみせ、デニム・レザー・スエードを問わず、タイトなズボンを履きこなすことが多かった。
また、このスタイルは、70年代のグラムロック的なファッションから、80年代のスポーティかつファッショナブルなスタイルへの移行を反映していると言えるだろう。
2 【1988】Public Enemy
ヒップホップがアートとして進化し、アメリカ中に広まるにつれて、グランドマスター・フラッシュのような華やかなファッションスタイルは、10代の若者達の服装の見本になっていった。
そして、同時期に活躍したHIPHOPクルーであるPublic Enemy(パブリック・エナミー)のチャックDのようなアーティスト達は、当時のロックシーンで流行っていたスタイルをヒップホップ的に再解釈し、スキニージーンズにハイカットのシューズを合わせていた。
これは今日のストリートでも頻繁に見かけるスタイルだ。
3 【2007】Cool Kids
Cool Kids(クール・キッズ)のサー・マイケル・ロックスとチャック・イングリッシュは、2000年代半ばに、HIPHOPシーンにおいてスキニージーンズを大流行させた立役者として広く知られている。
シカゴ出身の彼らは、スナップバックやストライプのTシャツ、鮮やかな色のスキニーなどレトロなヴィンテージスタイルをシーンに取り入れた。
さらに、彼は、2000年代のスニーカーカルチャーをHIPHOPに不可欠なものにし、SBやジョーダンを愛用し、ASAP MOBやOdd Futureに影響を与えた。
4 【2008】Pharrell Williams
Pharrell Williams(ファレルウィリアムス)はワイドカットや腰パンが人気の絶頂であった時期に、いち早くスリムフィットのジーンズを採用した。
また、ファレルがBBCやBAPEのバギージーンズを卒業し、細身のジーンズにスポンジ・ボブのタイトなTシャツと白縁のメガネを合わせていたのもこの頃だ。
現在のHIPHOPシーンにおけるスキニージーンズのトレンドは、2000年代のスケートボードから直接派生したものだと考える人もいる。
つまり、当時活躍していたプロスケーターのジム・グレコやアンドリュー・レイノルズが、ファレルのようなラッパー達に影響を与え、スケーターの美学をシーンに持ち込んだというのが今のところ最も有力な説だ。
5 【2009】New Boyz
当時活躍していたヒップホップデュオのNew Boyz(ニュー・ボーイズ)の曲『Cricketz』では、JAY-Zが2008年に発表した曲『Swagga Like Us』の中の「Can’t wear skinny jeans ’cause my knots don’t fit … So I rock Roc jeans ’cause my knots so thick(結び目が合わないからスキニージーンズは履けない…だから結び目が太いロッキングジーンズを履くんだ)」というリリックに対して反論している。
当時は、バギーパンツが定番のシルエットになって久しかったため、ニュー・ボーイズは、25年前にラッパー達が誇りを持ってタイトなデニムを履いていたのだということを改めて人々に知らしめた。
6 【2009】Kanye West
Kanye West(カニエウェスト)は、2016年にウィズ・カリファとTwitterで論争した際、「俺がタイトなジーンズを履けるようにしてやった」と言っていたが、彼がタイトなパンツを履いた初めてのラッパーというわけではなかった。
しかし、細身のデザイナーズデニムを広く普及させたのは間違いなくカニエだ。
特に、2010年に発表した曲『Christian Dior Denim Flow』では、エディ・スリマンのDior Hommeのデニムラインをシーンに紹介しているが、この曲は、多くのラッパー達がバギーパンツをやめてスキニージーンズを履くようになったきっかけと言えるだろう。
音楽プロデューサーとしても知られるLil B(リル・ビー)は2010年5月に、「my pants are so tiny I shud be awarded….. I’m wearing ass jeans so tiny I cudnt zip them up(俺のパンツはとても小さいから表彰されるべきだ….. ジッパーが閉まらないほど小さいジーンズを履いているんだ。」とツイートした。
また、2012年には『Tiny Pants B*tch』という曲もリリースしている。
バギーパンツとVANSで有名なクルー・The Packにかつて所属していた彼は、グループ脱退後、ここぞとばかりにスキニージーンズへの愛を示したのであった。
8 【2011】Lil Wayne
ファッションスタイルを単に進化させるラッパーもいれば、全く異なるスタイルに変えるラッパーもいる。
「今生きている中では最高のラッパー」であるLil Wayne(リル・ウェイン)は後者だ。
2010年にスケートを始めた彼は、シックなスタイルからカリフォルニアのスケータースタイルへと変貌を遂げた。
そして、Tripp NYCのレオパードプリントのデニムレギンスを履いて、MTV Video Music Awards 2011のステージに立った時には、既に彼は最高のロックスターになっていた。
9 【2014】Kid Cudi
Kid Cudi(キッド・カディ)が2008年にリリースして大ヒットした『Day ‘N’ Nite』は、エレクトロニック・インディー・ミュージックとヒップホップを融合させた新しいジャンルを生み出し、現代ラップのベースとなっただけでなく、様々なスタイルのファッションを生み出した。
この曲のMVでは、キッド・カディはブラウンのスキニージーンズ、レザージャケット、ニット帽という、当時のハウスインディーシーンを象徴するような格好で登場している。
また、2014年になってもスキニーはカディの定番であり、その年のコーチェラで2回パフォーマンスを披露した彼が、その時着用していた衣装は、いずれもそれ以後のメンズファッションの基準となった。
10 【2015】Travis Scott、ASAP Rocky
2010年代半ばになると、トラヴィススコット、エイサップロッキーに代表される、HIPHOPシーンにおける新しいファッションアイコンが、ジャンルや性別を超えたスタイルの2回目の流行を後押しした。
そして、BALMAINのワックス加工のバイカージーンズ、SAINT LAURENTの極端に細くてチェーンがあしらわれたデニムなど、次々にスキニージーンズが流行りをみせていった。
ジーンズはタイトになった一方で、足首のところでたるむほど丈が長くなり、超タイトなルックスに新しいテクスチャーが加わった。
11 【2017】Migos、21 Savage、Lil Uzi Vert
10年間にわたって君臨してきたスキニージーンズは、2017年にそのピークを迎えた。
Migos、21 Savage、Lil Uzi Vertなどのアーティストの定番であるAMIRIのダメージジーンズによって、スキニーは完全にラップのメインストリームでの地位を確保した。
AMIRIのデザインは、ダメージ加工、バンダナパッチ、チェーンの装飾など、伝統的なロックンロールスタイルの特徴をすべて備えているかもしれないが、マイク・アミリ氏は自分のデザインの美学が音楽のジャンルそのものではなく、今日のモダンなロックスターと結びついていると考えている。
そしてこの頃、スキニーはさらにタイトになり、BALENCIAGAのトリプルSのようなチャンキーなスニーカーや、YEEZYのミリタリーブーツと組み合わせられることが多くなった。
12 【2019】22Gz、Sauce Walka
腰パンのルーツは間違いなく90年代HIPHOPのバギーパンツだ。
そして、2010年代半ばには、チーフ・キーフやフレッド・サンタナらシカゴのドリルラッパー達が、よりスリムなジーンズによってこの腰パンスタイルを進化させた。
また、このトレンドは、22GzやSauce Walkaのようなラッパーが、Max B、Jim Jones、Juelz Santanaといった00年代のラッパーへのオマージュとして、ローライズデニムにB.B. Simonのベルトを合わせて着用しているおかげで、いまだに生き続けている。
13 【2021】Playboi Carti、Lancey Foux
今日、ラッパー達のデニムは、2Pacらのような90年代のクラシックなワイドレッグパンツに回帰している。
しかし、Playboi CartiやLancey Fouxのように、Dave VanianやSid Viciousのような後期ロックスターのエッジの効いたパンクやゴシックのスタイルに傾倒しているアーティストにとって、スキニーは依然として不可欠なアイテムだ。
1017 ALYX 9SMやRick Owensのようなブランドの洗練されたデザインは、スキニーフィットを高級レザーで表現したり、レザーのように見えるように樹脂コーティングしたりしており、ラッパー達が履くスキニージーンズの定番ブランドになっている。
いかがでしたでしょうか。今回は、いかにしてスキニージーンズがHIPHOPファッションの定番になったのかをご紹介しました。
HIPHOPファッション好き、ストリートファッション好き、そしてスキニーパンツが大好きなヤリラフィー達に楽しんでいただけたら幸いだ。
MINARI.(ミナリ)は情報の質にこだわり、記事の執筆に時間をかけて丁寧に行っています。他の記事もぜひ合わせてお楽しみ下さい。