ラッパー達はなぜEVISUのジーンズを履くのか？
2020年7月、EVISU（エヴィス）ジーンズのカモメロゴと、Cactus Jackのマークが施されたデニムアイテムを着用しているTravis Scott（トラヴィス・スコット）の姿がインスタグラムでアップされた。
公式には未だ発表されていないが、Travis ScottとEVISUのコラボアイテムのリリースは間近だろう。
HIPHOPアーティスト達はいつの時代も、EVISUを特別なジャパンデニムとして認識してきた。特に、JAY-ZやLil Wayneは、早い時期からEVISUの大ファンだ。
そして、今、EVISUが再びトレンドになっており、トラヴィスやリルウジがEVISUのデニムパンツを履いている。
今回は、そんなEVISUがいかにして始まり、進化し、そしてラッパー達に愛されるようになったのかを見ていこう。
【目次】
1 ジャパンデニムの登場
2 EVISUのこだわり
3 なぜEVISUがHIPHOPシーンで流行ったのか
4 EVISUの復活
5 プレミアムなEVISUジーンズ
1 ジャパンデニムの登場
1950年代に、アメリカ産デニムが日本で流行った。
しかしながら、LEVI’SやWrangler（ラングラー）のデニムのサイズ感は日本人男性に合わなかったので、小さいサイズにリメイクしなければならなかった。
1970年代になってアメリカンデニムは一世を風靡したが、需要が増えるにつれて品質が下がっていった。
そして、低品質のデニムに飽き飽きした日本人デザイナー達が、日本のやり方でデニムを復活させようと努めた。手染めの工程、ヴィンテージ機械、そして昔ながらの労働集約的な織り方（手織り）だ。
そのようにして、STUDIO D’ARTISANやWAREHOUSEといったジャパンデニムブランドが80年代から90年代にかけて流行り始め、品質の高さとディティールへの圧倒的なこだわりが評価されるようになっていった。
しかし、世界中がジャパンデニムに夢中になったのは、90年代に山根英彦が、デニム界に登場してからだ。
そう、彼こそがEVISUの創業者だ。
2 EVISUのこだわり
山根氏はEVISUジーンズを立ち上げる前に、ヴィンテージデニムを研究し、未加工で耐久性もある完璧なジーンズを作り上げようと考えた。
そして、同僚の辻田幹晴（のちにFULLCOUNTというデニムブランドを立ち上げた人物）と共に、山根氏は、仕立て屋の仕事を辞めて、1991年にEVISUをスタートさせたのであった。
ちなみに、EVISUというブランド名は、山根氏が釣りとお金が好きなことから、漁業の神であり商いの神でもある「えびす（えべっさん）」から取ったとのこと。
綿糸のロープをインディゴ染料の浴槽に通し、工場の屋根で色を酸化させるという工程を30回も繰り返した。
それだけ手間のかかるプロセスを踏むため、ブランド立ち上げ当初は、大阪の作業場で一日14個しかジーンズを製作していなかったというのも驚きだ。
また、山根氏が釣り好きであることから、冗談半分で、後ろのポケットにカモメをペイントしたのが、今ではEVISUのトレードマークになっているのも面白い話だ。
3 なぜEVISUがHIPHOPシーンで流行ったのか
山根氏は、大阪に初めてEVISUの店舗を出した7年後に、EVISU DONNA（エヴィスドンナ）というレディースラインを作った。
そして、その直後である2000年代初期に、もっと大きいことをしたいという願いから、山根氏は香港の起業家・Peter Caploweのもとを訪ねた。
Peter Caploweは後にThe Hubと呼ばれるアジアのファッション展示会を立ち上げた人物で、彼が、ユニークで派手なEVISUジーンズをロンドンやニューヨークのイケてる若者達に広めることを手伝った。
これが、日本のデニムブランドとしては初めての、EVISUの成功物語の始まりだ。
山根氏の影響力は拡大し続け、ストリートシーンでトレンドになり、JAY-ZやLil Wayneといった伝説的ラッパー達からラブコールが送られるようになった。
そして、彼らの歌詞に登場したことで、EVISUは今やHIPHOPの新時代の一端を担う存在になったのだ。
4 EVISUの復活
大成功を収めているEVISUにも勿論苦しい時期があり、2010年時点でEVISU JAPAN株式会社は約50億円の負債を抱えていた。
しかし、投資家達が完全に諦めようとしていたその時、とある投資会社の取締役を務めていたDavid Punが介入した。
David Punは、ビジネスチャンスを感じたため、EVISUを買収し、デザインやマーケティングから株主との交渉まで全てを再建。
そのおかげで、EVISUは数年のうちに完全復活を果たし、アジアでの存在感が回復するとともに、アウターやスウェットシャツ、キッズウェアなど幅広いカテゴリーのアイテムを作るようになった。
2020年には、ヨーロッパのストリートウェアブランドであるPALACEとコラボし即完売したのも記憶に新しく、また、Travis ScottやLil Uzi VertやLil Babyなど新世代のラッパー達がEVISUのデニムパンツを履いていることからもその人気ぶりがうかがえる。
Travis ScottやLil Uzi Vertのファッションについては下記からチェック。
5 プレミアムなEVISUジーンズ
David Punは、ブランドの再建中はアメリカやヨーロッパの市場から撤退することを決めたので、現在、EVISUの店舗は主にアジアにある。
EVISUのデニムパンツは今でも、一般人が購入するジーンズの4,5倍の値段で、特に100%日本製のジーンズは6万円を下らないほど高価だ。
プレミアムで高品質のEVISUのジーンズを手に入れるにはおそらく、日本の公式サイトでオーダーするか、日本国内の店舗で購入するしかない。
日本にいる我々はラッキーだ。世界中のファッショニスタが喉から手が出るほど欲しがるEVISUのジーンズを簡単に手に入れることができるのだから。
いかがでしたでしょうか。今回は、EVISUがいかにして、HIPHOPシーンに浸透していったのかを解説しました。
これからもEVISUがHIPHOPシーンのみならず、世界中で成長し続けることを日本人として強く願おう。
MINARI.（ミナリ）は情報の質にこだわり、記事の執筆に時間をかけて丁寧に行っています。他の記事もぜひ合わせてお楽しみ下さい。
